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遺言書の”検認”とは?

投稿日:2015年08月07日【 遺言

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 公正証書で作成した遺言書を除いて、遺言書の保管者又は発見者は、相続の開始を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を受けなければなりません(民法第1004条1項)。

 今回は、誤解の多い検認という制度について、その意味と具体的手続きを整理してみましょう。

1. 検認の意味

(1)目的
イメージ:遺言書の「検認」

 検認とは、遺言書の状態を確認して、後日の偽変造、毀損や隠匿を防ぐために行われる一種の証拠保全手続きのことです。

 検認手続きにおいては、遺言書の用紙が何枚にわたっており、どのような筆記具が用いられており、何が記載されているのかといったことや、日付、署名及び押印並びに加除訂正の有無や状態について調書に記録されます。遺言書のコピーが調書に編綴されるのが通常です。

 このように、検認は、あくまでも検認時点での遺言書のあるがままを記録することが目的であって、遺言書の内容や成立についての有効・無効を判断するものではありません。よって、日付や署名等の欠けた形式上無効な自筆証書遺言(民法第968条1項)についても、また公序に反するような内容上無効な遺言(民法第90条)についても、検認を受けることができるし、検認を受けなければなりません。

 また、検認には、遺言書の存在を相続人に対して知らせるという副次的な役割もあります。

(2)公正証書遺言との比較

 検認を受けなければならないのは、公正証書以外の方法で作成された遺言書です(民法第1004条2項)。

 公正証書遺言に検認が不要とされる理由は、その作成と保管に公証人が関与しており、偽変造、毀損や隠匿の危険が類型的に低いといえるからです。

(3)効果

 遺言書の検認申立ては、遺言書の保管者又は発見者に対して課された法律上の義務です。

 しかし、検認によっては、遺言書の実体法上の効力には何らの影響もありません。すなわち、検認を受けたからと言って、無効な遺言が、有効に転じるわけではありません。検認は、遺言書に対する家庭裁判所の「お墨付」ではないのです。

 さらに、検認なしに遺言を執行してしまったとしても、過料の対象となるのを別にすれば(民法第1005条)、その執行行為と効果が無効になってしまうわけではありません。

 実務上、たとえば、法務局に対して、検認のない自筆証書遺言を原因証明情報として申請された不動産所有権移転登記が受理されないということはあるでしょう。しかし、これは検認のない自筆証書遺言が無効であるということを意味するものではありません。単に、登記手続上は、検認の証明が必要になるというだけのことです。

 実体法上の遺言の効力について、公正証書であろうが、自筆証書であろうが、差はありません。

2. 検認の手続

(1)家庭裁判所の審判申立

 遺言書の保管者又は発見者は、家庭裁判所に対して、遅滞なく遺言書検認審判の申立てを行わなければなりません(民法第1004条1項)。申し立てる先は、相続開始地(最後の住所地)を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法第209条1項)。

 遺言書検認審判の申立書には、相続関係を明らかにするために、相続人目録を作成して、遺言者(=被相続人)の除籍謄本及び申立人・法定相続人全員の戸籍謄本を添付する必要があります。これは、申立人以外の相続人にも、検認手続きに出席する機会を与えるためです。

(2)相続人による立会及び調書の閲覧

 検認審判の期日が決まると、家庭裁判所は、それを相続人に通知します。通知を受けた相続人は、検認審判に出席することが出来ますが、出席するかどうかは各相続人の判断に任されています。

 なお、民法第1004条3項で、封印のされている遺言書は、検認の際に、相続人の立会いのもと、開封しなければならないと定められていますが、立会いの機会が保障されていれば、立会うかどうかは各相続人の自由です。

 ちなみに、自筆証書遺言は封印されていることがほとんどですが、封印自体は自筆証書遺言の要件ではありません(民法第968条)。よって、封印された自筆証書遺言を、検認前に誤って開封してしまったとしても、開封の事実によって、遺言が無効になるわけではありません。もちろん、誤って開封してしまった遺言書についても、家庭裁判所に提出して検認手続を経なければなりません。

 検認日時が通知されても、全ての相続人が出席・立会できるわけではありません。出席しなくても、後から検認の内容を確認できるように、相続人は、家庭裁判所に対して、検認調書謄本の交付を請求することが出来ます。遠方から、郵便で請求することも可能です。

(3)過料

 家庭裁判所への検認申立を怠った場合、検認を経ないで遺言を執行してしまった場合、並びに家庭裁判所以外で封印された遺言書を開封してしまった場合には、それぞれの行為の義務者又は行為者は、5万円以下の過料に処せられます(民法第1005条)。

 「過料」というのは、法律等に定められた義務や禁止などの実効性を持たせるために課される金銭罰のことです。「過料」は刑罰ではありません。さらに、上記のような規定に違反したり、それによって過料に処せられたからと言って、遺言の効力に影響はありません。

 今回のポイントは、検認とは遺言の状態に関する単なる証拠保全手続きであって、遺言の内容や成立に関する審査ではないということです。よって、当たり前のことですが、検認の有無にかかわらず、それらについて争いがあれば、別途、訴訟等の方法によって決することになります。

 神戸六甲わかば司法書士事務所では、遺言書作成、相続手続きに関する様々なご相談を受け付けています。

遺言についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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