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相続税の計算について

投稿日:2014年12月04日【 相続

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 一般的に日本人は税務申告には疎いと言えます。それは、会社員や公務員の場合は、確定申告が不要であるため、多くの人は税務申告に慣れていないためです。

 しかし、誰しも、遅かれ早かれ(多かれ少なかれ)、税務申告が必要となる場面に必ず遭遇するものです。相続税の申告は、そのような場面の一つです。

 そこで今回は、相続税の計算について考えてみることにしましょう。自分で税額を計算してみると、手間ではあるものの意外にも簡単であることに気づくはずです。

 

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1. 一般的注意事項

(1)相続税の申告・納税期限

 相続税の申告・納税期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月の間です。一定の場合(自然災害等のために期限内申告が困難である場合等)には、申告期限の延長が認められる場合があります。

(2)税務署の管轄

 相続税の申告書は、被相続人(=お亡くなりになった方)の住所地を管轄する税務署に提出します。相続人の住所地を管轄する税務署ではありません。

(3)相続財産の評価

 相続財産の評価方法が、比較的厄介だと思われるものについて、以下のように評価します。

【a. 土地】

 土地の評価には、路線価方式と倍率方式という二つの方法があります。市街地の場合には、毎年公表される路線価を基準として計算します。それ以外の土地の場合には、固定資産税の課税評価額に一定の倍率を乗じて計算します(倍率については、対象不動産を所轄する税務署で教えてもらえます。)。

 路線価方式で土地の評価額を計算する場合の以下の具体例を考えてみましょう。

<想定>

  • 敷地の現況は自用宅地(普通住宅地区内)である。
  • 敷地は四角形(接道部分幅10m×奥行10m)の形である。
  • 敷地面積は100㎡である。
  • 敷地は路線価150,000円/㎡の道路に1面のみ接している。

 上記の想定では、

評価額=路線価×奥行価格補正率×地積
=150,000×1.00×100
=15,000,000(円)

となります。このような計算方法が基本となります。奥行補正率は、別表1を参照してください。路線価図は、インターネットで公表されています。

 敷地が多面で接道している場合、敷地に接道がない場合、間口が狭い土地の場合、不整形地である場合、私道や公衆用道路の場合等、若干複雑な計算を要する場合があります。しかし、これらの場合も、税務署に対象敷地の公図・測量図・登記事項証明書・評価証明書・現地写真等の資料を持って相談に行けば、税務署の職員が親切に評価方法を指導してくれるでしょう。ただし、税務署員に評価計算や申告書の記入を丸投げするような「相談」の仕方は、くれぐれもしてはいけません。相談は、申告者が自ら行った計算の過程で生じた具体的疑問を聞くようなものでなくてはなりません。

 さらに、被相続人と同居していた家族が自宅の不動産を相続する場合等には、その宅地等の一定面積に対して(宅地の場合、現行240㎡以下、平成27年1月1日以降の相続に関しては330㎡以下)は、その評価を8割減じて評価することが出来る特例が適用されます。上の例が、この小規模宅地の特例の要件を満たす場合には、

1,500万円×(1-0.8)=300万円

という相続税法上の評価を受けることになります。この特例の詳細な要件については、国税庁のホームページをご確認ください。

【b. 建物】

 現在、建物の相続税課税上の評価額は、ほぼ全国的に固定資産税評価額と同じです。毎年郵送される固定資産税課税通知書を見るか、市町村役場の資産税課で評価証明書を取得すれば、建物の評価額を知ることが出来ます。

【c. 非上場株式の評価】

 もう一つ、相続財産の課税評価が比較的厄介なものが、非上場株式です。しかし今回は、その評価方法については割愛します。というのも、非上場株式の評価が必要となるのは、多くは中小企業の経営者がお亡くなりになった場合だからです。その場合には、会社の顧問税理士が相続税務も担当するのでしょうから、相続人自ら計算をする場面は少ないかも知れません。

(4)相続財産とは?

 相続財産と言っても、民法上のそれ(狭義の相続財産)と、相続税法上のそれとでは若干範囲が異なっています。たとえば、相続人に対して給付された生命保険金(被相続人が掛金を支払ったもの)は、民法上は相続人の固有財産であって相続財産ではありません。これに対して、相続税法上は、このような生命保険金も相続財産とみなされてしまいます。

 このようなことが起こるのは、相続税法は課税の不公平が生じるのを防ぐために、民法上の相続財産よりは広い範囲で課税対象財産を把握しているからです。

このように、相続税法上、相続財産同様の位置づけをされる財産としては、生命保険金、死亡退職金、相続開始前3年内の相続人に対する贈与財産等があります。

 

 

2. 相続税の計算手順

(1)計算の順序

 相続税は、以下の順序で計算します。

  • 課税対象財産の価額計算
  • 相続税の課税価額計算
  • 相続税の総額計算
  • 各相続人の相続税額計算
  • 各相続人別の税額控除検討

 一見すると回りくどい計算手順のように見えますが、相続税の公平な課税のためにこのような手順を採用していることは、具体的に計算してゆく過程で解ると思います。

(2)計算例

 下記のような想定に基づいて、実際に計算を行ってみましょう。

<想定>

  • 相続人は、被相続人の配偶者A、同居の子B及び別居の子Cの3名である。
  • 被相続人が死亡時に所有していた財産(狭義の相続財産)は、
    自宅不動産(土地100㎡2,500万円→評価減の結果500万円、建物500万円)
    預貯金(残高合計3,000万円)
    現金(5,000万円)
  • 死亡によって給付された財産(みなし相続財産)は、
    死亡退職金(1,000万円)・・・Aが受給
    生命保険金(2,000万円)・・・B及びCが各1,000万円ずつ受給済み
  • 生前贈与はなし。
  • 相続債務(所得税200万円、その他債務100万円)・・・Aが立替えて納付・支払済み
  • 葬式費用(200万円)・・・Aが支払済み
  • 協議分割の結果、
    Aは、現金(5,000万円)と預貯金債権の半分(1,500万円)を相続する。
    Bは、自宅不動産(合計1,000万円)を単独で相続する。
    Cは、預貯金債権の半分(1,500万円)を相続する。

 Bは、被相続人と同居しており、不動産を相続後も引き続きそこに居住し続けるとすると、特定居住用宅地に関する評価の特例の適用を受けることが出来ます。この場合、相続対象土地の評価を8割減額することが出来ます。結局、Bの相続する自宅不動産の相続税法上の評価は、土地500万円及び建物500万円ということになります。

【ⅰ. 課税対象財産】

 上記の想定のもとで、課税対象財産の価額は、

課税対象財産=相続財産+みなし相続財産-非課税財産-債務-葬式費用+生前贈与
=9,000万円+3,000万円-1,000万円(退職控除)-1,500万円(生保控除)-300万円-200万円
=9,000万円

 よって、課税対象財産は9,000万円ということになります。

 ちなみに、非課税財産とは、課税価額から控除される項目のことです。主な非課税財産は、退職金控除と生命保険金控除です。それぞれ、「500万円×法定相続人の数」を限度として、課税対象財産から控除することが出来ます。ここでは、死亡退職金の全額に当たる1,000万円、及び生命保険金のうち1,500万円が控除されます。

【ⅱ. 相続税の課税価額】

 相続税の課税価額は、上記ⅰの課税対象財産価額から基礎控除額を差し引いた額です。基礎控除額は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」(平成27年1月1日以降開始した相続に関しては、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)で計算されます。

課税価額=課税対象財産額-基礎控除額
=9,000万円-(5,000万円+1,000万円×3)
=1,000万円

 よって、相続税の課税価額は1,000万円です。

【ⅲ. 相続税の総額計算】

 相続税の総額を計算するには、各相続人が法定相続分で相続したと仮定して税額を計算し、各相続人の仮定相続税額を合算します。各相続人の法定相続分は、A(2分の1)、B(4分の1)、C(4分の1)ですから、

Aの仮定相続分:1,000万円×0.50=500万円
Bの仮定相続分:1,000万円×0.25=250万円
Cの仮定相続分:1,000万円×0.25=250万円

 別表2の税率表によると、各相続人の仮定相続税額は、

相続税額=相続分×税率-控除額

Aの仮定相続税額:500万円×0.1-0=50万円
Bの仮定相続税額:250万円×0.1-0=25万円
Cの仮定相続税額:250万円×0.1-0=25万円

 よって、相続税の総額は上記の各相続人の仮定相続税額を合算した100万円です。

【ⅳ. 各相続人の相続税額】

 各相続人の実際に支払うべき相続税額は、上記ⅲの相続税総額を各相続人が取得する相続財産の割合で按分した額になります。まず、本想定において、各相続人が取得する財産の価額(上記ⅰのうちどれだけの財産を取得したかということ)は、

Aが取得する財産価額:5,000万円(現金)+1500万円(預金)-500万円(葬式・債務)=6,000万円
Bが取得する財産価額:1,000万円+250万円(生保控除後の生保1/2)=1,250万円
Cが取得する財産価額:1,500万円+250万円(生保控除後の生保1/2)=1,750万円

 です。よって、相続税総額を各相続人取得財産価額で按分すると、

Aの相続税額:100万円×6,000万円/9,000万円=666,666円
Bの相続税額:100万円×1,250万円/9,000万円=138,888円
Cの相続税額:100万円×1,750万円/9,000万円=194,444円

 となります。

【ⅴ. 各相続人別の税額控除検討】

 一応上記ⅳの計算までで各相続人の納付すべき額は確定しますが、さらに一定の要件に当てはまる場合には、この税額からの税額控除が認められます。

 税額控除の種類は、①贈与税額控除、②配偶者控除、③未成年者控除、④障害者控除、⑤相次相続控除、⑥外国税額控除の6種です。

 ここでは、Aの配偶者控除を検討してみましょう。まず、課税される財産額の2分の1(法定相続分)と1億6,000万円のいずれか多い方と、実際に相続した額とを比較して、その少ない額(α)が計算の基礎になります。ややこしい書き方ですが、その意味するとことは、次のようなことです。

 ここでは、4,500万円(課税対象財産の総額9,000万円の1/2)と1億6,000万円を比較すると、多いのは1億6,000万円です。実際にAが相続した財産額は6,000万円ですから、1億6,000万円と比較して少ない額である6,000万円(α)が計算の基礎となります。

 控除額の計算式は、

配偶者控除額=相続税総額×α/課税財産価額

=100万円×6,000万円/9,000万円
=666,666円

 よって、Aの相続税は全額控除されるので、実際の納税額はありません。但し、配偶者控除を受けるためには、控除申請しなければなりませんので注意してください。

 自分で相続税の計算をするときに、役に立つのが税務署です。税務署も、まじめに納税しようとする人に対しては親切に相談にのってくれるものです。困った時には、どんどん利用すべきだと思います。

◎別表1(奥行補正率表)

地区区分 ビル街
地区
高度商業
地区
繁華街
地区
普通商業・併用
住宅地区
普通住宅
地区
中小工場
地区
大工場
地区
奥行距離(m)
4 未満 0.80 0.90 0.90 0.90 0.90 0.85 0.85
4 以上 6 未満 0.92 0.92 0.92 0.92 0.90 0.90
6 〃 8 0.84 0.94 0.95 0.95 0.95 0.93 0.93
8 〃 10 0.88 0.96 0.97 0.97 0.97 0.95 0.95
10 〃 12 0.90 0.98 0.99 0.99 1.00 0.96 0.96
12 〃 14 0.91 0.99 1.00 1.00 0.96 0.96
14 〃 16 0.92 1.00 0.98 0.98
16 〃 20 0.93 0.99 0.99
20 〃 24 0.94 1.00 1.00
24 〃 28 0.95 0.99
28 〃 32 0.96 0.98 0.98
32 〃 36 0.97 0.96 0.98 0.96
36 〃 40 0.98 0.94 0.96 0.94
40 〃 44 0.99 0.92 0.94 0.92
44 〃 48 1.00 0.90 0.92 0.91
48 〃 52 0.99 0.88 0.90 0.90
52 〃 56 0.98 0.87 0.88 0.88
56 〃 60 0.97 0.86 0.87 0.87
60 〃 64 0.96 0.85 0.86 0.86 0.99
64 〃 68 0.95 0.84 0.85 0.85 0.98
68 〃 72 0.94 0.83 0.84 0.84 0.97
72 〃 76 0.93 0.82 0.83 0.83 0.96
76 〃 80 0.92 0.81 0.82
80 〃 84 0.90 0.80 0.81 0.82 0.93
84 〃 88 0.88 0.80
88 〃 92 0.86 0.81 0.90
92 〃 96 0.99 0.84
96 〃 100 0.97 0.82
100 〃  0.95 0.80 0.80

◎別表2(相続税速算表 平成26年12月31日まで開始の相続)

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
3億円以下 40% 1,700万円
3億円超 55% 4,700万円

◎別表2(相続税速算表 平成27年1月1日以降開始の相続)

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

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