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遺言執行者と相続財産管理人の関わる不動産登記手続きについて

投稿日:2014年12月06日【 不動産登記 | 相続 | 遺言

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 登記手続きに関わっていると、実体法と登記法(手続法)との整合性について悩む場面に頻繁に直面します。今回は、そのような場面の一つとして、遺言執行者と相続財産管理人が関与する登記手続きについて、整理してみることにしましょう。

1. 実体法上の相違について

(1)遺言執行者とは

 遺言執行者とは、相続人の代理人(民法第1015条)として、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持った(民法第1012条1項)財産管理人のことを指します。

 遺言執行者の多くは、遺言によって指定され(民法第1006条1項)、就任を承諾することによって任務を開始します。これに対し、遺言執行者がいない場合(遺言による指定がなされなかった場合、指定されたものが就任承諾しなかった場合、就任した遺言執行者が途中で死亡・欠格等した場合等)は、申立てによって家庭裁判所が遺言執行者を選任します。

 相続人不存在の場合の、遺言執行者の法的性質や相続財産管理人との関係という問題も考え始めると面白いと思いますが、今回は省略します。

(2)相続財産管理人とは

 相続財産管理人とは、人が相続人存否不明のまま(戸籍上の相続人が存在しない場合、全部包括受贈者が存在しない場合等)死亡した場合に、利害関係人等の申立てによって選任される財産管理人のことを指します。相続財産管理人は、相続財産に関して、管理・清算事務を行います。

 相続財産管理人の管理権限に関して、原則として保存行為及び物・権利の性質を変更しない範囲での改良・利用行為が出来るにすぎません(民法第953条、第28条)。この原則的な管理権限を越える行為については、家庭裁判所の許可審判を受ける必要があります。

 清算権限に関して、相続財産管理人は、相続債権者や受遺者に対する弁済や、そのための競売による換価手続を行うことが出来ます(民法第957条2項、第929条から第932条)。

 相続財産管理人の法的性質について、民法は特に明文規定を置いているわけではありません。ただ、相続財産管理人の権限消滅について定めた民法第956条1項は「相続財産管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。」と定めており、この規定を読む限り、相続財産管理人は法定代理人のようにも読めます。

 しかし、相続財産管理人の財産管理事務によって権利義務帰属するのは相続財産という法人(民法第951条)であることから、相続財産管理人は、代理ではなくて相続財産法人の代表機関であると考えるべきでしょう。

(3)代理と代表の違い

 遺言執行者は相続人の代理人であって、相続財産管理人は相続財産法人の代表者です。このように、代理と代表とは、概念的には区別できますが、実体法上は両者を区別することにほとんど実益はありません。代表に関しては、代理に関する規定が準用されているからです。

 しかし、登記手続きのうえでは、代理と代表とで、申請情報記載事項に差異が生じることがあります。

2. 登記手続き上の相違について

 以下の各登記について、必要となる登記の種類並びに申請人・権利者・義務者の申請権限・記載方法に絞って、考えてみましょう。下記(1)(2)(3)は遺言執行者がいる場合、(4)(5)(6)は相続財産管理人が選定されている場合です。

(1)相続を原因とする所有権移転登記

 相続人の一人に対し、相続財産たる特定の不動産を「相続させる」遺言がなされた場合、登記原因は「年月日遺贈」ではなく、「年月日相続」となります。この所有権移転登記は、遺言執行者に申請権限がないため、通常の相続登記と同様に相続人による単独申請となります(最高裁判決平成3年4月19日)。

 申請人の記載方法については、被相続人氏名をカッコ書きし、申請人たる相続人の住所・氏名を記載します。

(2)遺贈を原因とする所有権移転登記

 登記原因が「年月日遺贈」となるのは、原則的には遺言書に「遺贈する」と記載されている場合です。例外的に、相続人全員に対して包括遺贈されている場合には、相続分の指定(民法第902条1項)があったものと解するのが登記実務の運用となっています。相続人以外の第三者に対して財産を与える旨の遺言は、その文言が「相続させる」となっていても、登記原因は「年月日遺贈」となります。

 このように若干ややこしい状況が生じたのは、「遺贈」による所有権移転登記の登録免許税の税率(20/1000)が、「相続」によるそれ(4/1000)よりも高率であるため、なるべく登記原因を「相続」として解釈できるように実務的な配慮が働いたためだと思われます。しかし、登録免許税の差については、「遺贈」による移転登記においても、受贈者が相続人である場合に、戸籍謄本等を提供すれば、4/1000とする先例(平15.4.1-1022)があるため、このような解釈や登録免許税法の規定も見直すべきだと思います。

 さて、「年月日遺贈」を原因とする所有権移転登記の場合には、権利者は受贈者、義務者は遺贈者たる亡何某となり、遺言執行者が義務者(?)の代理として共同申請することになります。

 この申請において、申請情報記載の申請人として遺言執行者(の住所・氏名)を記載する必要はありません。遺言執行者は、義務者ではなくてその代理に過ぎないから、という理由です。

 ちょっと紛らわしいですが、実体法上、特定遺贈の場合に、遺贈の義務を負っている者(=遺贈義務者)は、通常は相続人です。死んでしまった遺贈者は、遺贈義務者ではありません。しかし、登記法における「義務者」の概念は、あくまでも手続上形式的に定められるものなので、実体法上の概念とは異なることに注意してください。

(3)清算型遺贈に必要な登記

 清算型遺贈とは、遺言書に「甲不動産を売却し、売得金から諸手続費用を差し引いた残額を、A及びBに遺贈する。」というような定めをすることです。

 この場合、先ず遺言執行者が申請人となって単独で「年月日相続」による法定相続人への所有権移転登記を行い、次に遺言執行者が法定相続人を代理して買受人との共同申請によって「年月日売買」による所有権移転登記を行います。どちらの登記申請においても、遺言執行者の氏名住所を申請情報に記載する必要はありません。

(4)相続人不在のため相続財産管理人が選任された際に必要となる登記

 相続人があることが明らかでないときには、相続財産を一種の財団とみなして、相続財産法人が成立します(民法第951条)。この場合には、相続財産法人の代表として相続財産管理人が選任され(民法第952条)、清算手続き(相続債権者及び受遺者に対する弁済等)を行います。清算手続きの後に、残余の財産があれば、①特別縁故者(民法第958条の3)、②共有者(民法第255条)又は③国庫(民法第959条)に帰属させます。

 相続財産法人が成立したときに、最初に行わなくてはならない登記は、所有権登記名義人表示変更の登記です。具体的には、相続財産管理人が申請人となって「年月日相続人不存在」を原因として、登記名義人表示を「亡何某」から「亡何某相続財産」に変更します。申請情報への相続財産管理人の住所・氏名の記載が必要とされています。

 相続財産が法人とされることにより、申請情報に代表者の氏名を記載しなければならないという点については、不動産登記令第3条2号に規定があります。一方、住所記載についての根拠ははっきりしません。同令同条1号「申請人の氏名又は名称及び住所」に言うところの「住所」は、ここでは相続財産法人の住所のことであって、相続財産管理人の住所ではありません。また、同令同条3号の「代理人」は、申請代理人(司法書士等)のことであって、申請人たる法人の代表者のことではありません。

 結局、申請情報への相続財産管理人の住所記載まで要求する意味は、実務上の必要性に求めるしかないのでしょう。

(5)特別縁故者に相続財産中の不動産を移転させる登記

 特別縁故者への財産分与(民法第958条の3)の審判が確定した場合の所有権移転登記の申請は、登記原因「年月日民法第958条の3の審判」として特別縁故者から単独で行います。この際、審判書正本と確定証明書を登記原因証明情報として添付します。

 相続財産管理人は、申請人ではないので申請情報への記載は不要です。

(6)相続財産を任意売却したことによる所有権移転登記

 相続債務を弁済するために相続財産たる不動産を処分する必要がある場合、原則は競売(民法第957条2項、同法第932条)により不動産を換価します。これに対して、任意売却による換価は、相続財産管理人の権限外の行為であるため、これをするためには家庭裁判所の許可審判を受ける必要があります(民法第953条、同法第28条)。

 任意売却に基づく不動産の所有権移転登記申請に関しては、通常の売買による移転登記手続きとほぼ同様です。但し、添付書類として許可審判書正本及びその確定証明書を付す必要があること、並びに申請人として相続財産管理人の住所・氏名を申請情報に記載する必要があることに注意すべきです(この点に関しては、文献での確認は取れませんでした。)。

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