遺言執行者について
投稿日:2015年06月18日【 遺言 】
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近年、遺言書を作成することによって、自らの死後の財産の処分や帰属等を定めておきたいと考える人が多くなっています。法定相続と異なった処分をしたい、死後の争いを予防したい等々、遺言を行う人の動機や目的は様々です。
しかし、遺言書を作成しただけで、遺言者の目的が達せられるわけではありません。遺言の効力が生じる時(=遺言者の死亡の時)には、遺言者はこの世にいないのですから、当然、誰かがその内容を実行に移す手続き(以下、「遺言執行」という。)を行わなければなりません。
そこで今回は、遺言執行を行う者(以下、「遺言執行者」という。)について、考えてみましょう。遺言執行者の役割や性質について理解することは、効果的な遺言を行い、遺言を書きっぱなしにしないためにも有用だと思うからです。
1. 遺言執行者の指定・就任・選任
遺言執行者を誰にするのかということは、遺言者が指定しておくことが出来ます。また、第三者に対して、遺言執行者の指定を委託することもできます(民法第1006条1項)。
遺言による遺言執行者の指定は、遺言者が一方的に行う行為ですから、指定を受けたことのみをもって被指定者が遺言執行者になることが決まってしまうわけではありません。被指定者は、遺言執行者への就任を承諾するのか、拒絶するのかを選択することが出来ます。そこで遺言執行者への就任を承諾すれば、被指定者が遺言執行者となります(民法第1007条)。
遺言による被指定者が就任を拒絶したり、被指定者が死亡してしまったり、あるいはもともと執行者の指定がない場合等には、相続人等の利害関係人の申立により、家庭裁判所が遺言執行者を選任します(民法第1010条)。
2. 遺言執行者の必要性
民法には遺言執行者についての詳細な規定が置かれていますが、遺言執行のために必ずしも遺言執行者が必要というわけではありません。遺言執行者がいなくても、相続人自身が遺言執行することもできます。
相続人の間に遺言内容を実現させることについて争いがなく、しかも全ての相続人が遺言執行の手続きに対して協力的であるならば、遺言執行者を特に指定・選任する必要性は低いのかも知れません。
しかし、共同相続人同士が対立することもあれば、共同相続人の一人が行方不明になることもあり得ます。このような事態になれば、遺言執行を事実上阻害してしまいかねません。よって、できることならば遺言によって遺言執行者を定めておくに越したことはありません。
また、遺言により認知(民法第781条2項、戸籍法第64条)、相続人の廃除又はその取消し(民法第893条、同法第894条)を行う場合には、法律の規定により必ず遺言執行者を置くことが必要となります。これらの場合には、定型的に相続人が遺言執行に協力することを期待できないという理由によります。
3. 遺言執行者と相続人の対立の場面
遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限があります(民法第1012条1項)。遺言執行者が行う遺言執行の中身は、以下のような行為です。遺言執行のために、裁判の原告や被告になることもあります。
- 相続財産目録の調製
- 遺産の分配、遺贈や寄付行為の執行
- 認知、廃除、廃除の取消
民法上、遺言執行者と相続人との関係には、委任の規定が広く準用されており(民法第1012条2項、同法第1020条)、「遺言執行者は、相続人の代理人とみな」される(民法第1015条)と定められています。
しかし、遺言執行者の行う行為は、相続人に有利なものばかりではなく、むしろ両者が対立する場面も少なくありません。たとえば、死後認知によりあらたな相続人が加われば、他の相続人は反発するかも知れません。遺言による廃除がなされれば、廃除によって相続権を失うことになる相続人は抵抗するかも知れません。また、遺言によって相続人以外の第三者に遺贈がなされるとしたら、相続人は遺言執行者を相手として遺言の無効を主張するかも知れません。
さらに、民法第1013条は、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできない」とも定めています。もし遺言執行者が、相続人の「代理」であるとするならば、相続人から相続財産の処分権限を一時的にでも奪ってしまうようなこの規定は奇妙に思えます。
このように、遺言執行者の行為は、必ずしも相続人の利益に合致するとは限りません。故に、遺言執行者が相続人の代理とみなされるという民法第1015条の規定は、遺言執行行為の効果が相続人に帰属するという意味にすぎないと解すべきでしょう。
神戸六甲わかば司法書士事務所では、遺言書作成など遺言に関する様々なご相談を受け付けています。
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