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「ひとの保証人にだけはなるな。」の意味

投稿日:2016年09月03日【 債務整理(借金問題) | 金銭トラブル

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「ひとの保証人にだけはなるな。」という言葉を聞いたことのある人は多いでしょうが、その意味についてじっくりと考えたことのある人はそれほど多くはないのかも知れません。しかし、保証契約が危険なものであるという漠然とした認識は、多くの人が共有しているでしょう。

 

そこで、今回は、保証という制度について基本的な仕組みを理解するとともに、日常生活の中で保証に遭遇する場面と問題点を考えてみましょう。

 

 

1. 保証とは

(1) 保証の意味

保証とは、主たる債務者が債務を履行しないときには、保証人が代わりに履行することを約する契約です(民法第446条1項)。つまり、保証とは、抵当権や質権等の物的担保を設定する契約と同様に、債務の履行を担保するという経済的目的をもった契約の一つです。このため、保証人のことを「人的担保」と呼ぶこともあります。

 

保証の場面には、債権者、主たる債務者及び保証人という3者が登場しますが、保証契約の当事者となるのは債権者と保証人です。主たる債務者と保証人との間には保証委託関係があるのが通常でしょうが、このことは保証人が債務を履行した後の求償等にかかわること(民法第459条等)であって、保証契約の成否には影響しません。つまり、主たる債務者から頼まれなくても、保証人になることは出来るのです。

 

また、保証債務には、主たる債務者が履行しないときに、履行しなければならないという二次的性質があります。このため、保証人には、原則として、「催告の抗弁権」(民法第452条)と「検索の抗弁権」(民法第453条)という一種の防御権が認められています。

 

すなわち、保証人は、債権者から履行の請求を受けても、「まず主たる債務者に請求してから出直してくれ」と言って、とりあえず履行しないでおくことができ(=催告の抗弁権)ます。さらに、債権者が主たる債務者に請求した後であっても、主たる債務者に弁済するだけの資力がありかつ執行が容易であることを保証人が証明したときは、債権者は、まずは主たる債務者の財産に執行しなければなりません(=検索の抗弁権)。

 

もっとも、このような抗弁権があることは債権者にとっては負担でしかありません。そこで、これら抗弁権は、契約によって排除されるのが普通です。両抗弁権を排除する形態の保証を「連帯保証」と呼びます(民法第454条)。

 

連帯保証は、民法上、抗弁権のある原則的形態の保証(「普通保証」とでも呼ぶべきもの。)の例外として規定されていますが、現実の利用状況を見れば、保証と言えばすべて連帯保証のことを指すと言っても過言ではないでしょう。さらに、商法上の保証は連帯保証を原則としています(商法第511条)。

 

連帯保証には、催告・検索の抗弁権が無いことの他にも、主たる債務者・保証人の一方に生じた事由について連帯債務の規定が準用される(民法第458条)など、債権者の債権管理・回収のための便宜が図られています。

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かつて保証契約は口頭や黙示でも成立してしまう諾成契約とされていましたが、平成16年の民法改正(翌年4月1日施行)によって、書面によらなければ効力を生じない要式契約とされました(民法第446条2項)。

 

 

(2) 特殊な保証

主たる債務は、保証契約を締結する時点で存在しているのが普通ですが、将来発生する債務を保証の対象とする場合もあります。

 

例えば、継続的取引を行っている事業者の一方が他方に対して次々に発生・消滅する債務の履行を担保する必要がある場合に、かつては信用保証=根保証という形態の継続的保証契約が用いられていました。しかし、このような保証においては、保証人の負担すべき債務の限度額や期間が過大・過酷なものとなり、このことが社会問題化したことから、平成16年の民法改正によって一定の規制が加えられるようになりました(民法第465条の2以下参照)。その詳細については、本稿では述べません。

 

また、日本では古くから、従業員の不手際によって生じた事業の損害を、その親等に賠償させるという慣習や契約手法(=「身元保証」)が存在しています。雇用主が、従業員を雇用する際に、将来発生するかどうかも分からないような損害賠償請求権を担保する契約をその親等との間で結ぶのです。このような契約にも弊害が多いことから、身元保証法という法律によって一定の規制が加えられました。その詳細については、本稿では述べません。

 

 

2. 日常生活で出会う保証

「ひとの保証人にだけはなるな。」と言っても、日々の生活の中で、私たちが自ら保証人になったり、第三者に保証人となることを頼んだりする必要が生じます。そのような場面について、具体的に考えてみましょう。

 

(1) 住宅ローンに伴う保証

住宅ローンを組む際には、購入した不動産に対し、融資した銀行(又はその保証会社)のための抵当権が設定されるのが通常です。それに加えて、銀行が、債務者の親等と保証(及び物上保証)契約を結ぶこともあります。

 

もし、住宅ローンを申し込んだ銀行から、融資の条件として保証人を立てること等を要求されたのであれば、銀行はローン申込者の信用力を相当低く見積もっていると言えるでしょう。借りてしまう前に、借りようとしている金額が身の丈に合っているのかよく検討すべきでしょう。

 

また、住宅ローン融資には、後記(3)の「機関保証」が利用されることも頻繁です。

 

 

(2) 不動産賃貸借に伴う保証

住宅等の不動産を借りるときに、貸主から、地代・家賃等の支払を担保するために、保証人を立てるように求められることがあります。

 

不動産賃貸借に伴う保証契約の場合、保証人の責任の範囲については予想がつきやすいことから、保証債務が過大となる危険は比較的少ないといえます。

 

また、不動産の貸主側にとっても、借主の信用力を見極めるのは容易ではないことから、このような保証の利用によって地代・家賃の回収を容易にすることができれば、不動産の活用を促進する効果もあると考えられます。不動産賃貸借に伴う保証契約は、保証人にとって比較的危険が少なく、貸主と借主双方にとっても、メリットがあるのです。

 

 

(3) 保証会社(機関保証)の利用

債務の保証を、専門の会社(=保証会社)に委託することがあります。このような形態の保証は「機関保証」と呼ばれ、現在では、住宅ローンやカードローン等契約の多くに、機関保証の仕組みが付随しています。

 

債務者自ら保証料を支払うのが通常であることから、機関保証は、履行不能という危険に対する債務者のための「保険」であるかのように誤解されます。しかし、保証会社が、債務者の代わりに債務を履行(=「代弁済」)しても、債務者が履行責任を逃れることは出来ません。つまり、機関保証は、債務者のための保険ではありません。むしろ、機関保証は、債権者(主に銀行等の金融機関)が不良債権を抱え込まないようにする等、債権者の便宜のために利用されているのです。

 

機関保証は、主たる債務の契約に組み込まれてしまっていることが通常であるため、避けることができません。例えば、住宅ローン融資の条件として機関保証の利用が義務付けられているような場合、お金を借りるためには機関保証を利用しないわけにはいきません。

 

そのためか、多くの債務者は、機関保証を利用していることを意識すらしないようです。しかし、意識もしていない、理解もしていない契約を義務付けられているとは、何とも奇妙なことではないでしょうか?

 

 

(4) 株式会社の有限責任と保証

株式会社の株主は、会社債権者に対して履行責任を負いません。会社が債務超過に陥って倒産すれば、債務の引き当て(=「責任財産」)となるのは会社財産のみであって、株主の財産が差押えられることはありません。このことを、『株主は会社債権者に対しては「有限責任」を負担している』と表現します。ここで「無責任」でなくて、「有限責任」という理由は、株主が会社に対して持つ出資持分(=株式)に限っては、債務の引き当てとなるからです。

 

しかし、周囲を見渡せばすぐにわかるように、日本のほとんどの会社においては、会社、経営者及び株主は三位一体の関係にあることが常態です。さらに、会社財産と経営者・株主の個人財産との境目も不明瞭です。

 

このような状況では、会社と取引する相手方は、会社財産だけを当てにしていたらとても不安な立場に立たされることになるでしょう。そのため、株主たる経営者(及びその親族)である個人が、会社の債務を保証することも珍しくはありません。例えば、会社が銀行から事業資金を借りるときに、オーナー経営者が当該債務の履行を保証し、さらに自宅に銀行のための(根)抵当権を設定するというようなことは、よくあることです。

 

出資者の有限責任が認められているのは、株式会社のみだけではなく、合同会社、社団法人、権利能力なき社団等、いろいろな法人・組織があります。

 

 

(5) 主たる債務者の破産と保証人の責任

保証債務には、主たる債務に附従するという性質があります。すなわち、主たる債務が無ければ保証債務も成立しないし、主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅します。では、主たる債務者が破産して、免責を受ける(自然人の場合)なり、法人格が消滅する(法人の場合)なりしたような場合には、保証債務も附従して消えてしまうのでしょうか?

 

残念ながら、主たる債務者が破産しても、保証債務には影響しません。つまり、保証人は、債務を履行できない破産者=主債務者に代わって、債務を履行しなければなりません。そもそも、保証人の役割は、主たる債務者に信用不安が生じるような事態において発揮されるべきものなのですから、保証債務が消滅しないことは当然のことです(破産法第253条2項参照。正確には、もうちょっと複雑な説明が必要ですが、本稿ではこれ以上述べません。)。

 

よって、主たる債務者が破産したことによって、一見健全な保証人まで連鎖的に破産等の手続きを余儀なくされるということもあるのです。

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友人の借金の保証人になるような、あからさまに危険な場合を除いても、自ら保証人になったり、他人に保証人になることを頼んだりする場面は、意外と多いものです。そのような場面では、具体的状況に照らして、当該保証契約が本当に必要・妥当なものか、何のために保証するのか、保証の結果としてどんなことが起こりうるのか、きちんと理解しておくべきでしょう。保証人になってしまった後で取りうる防御手段なんて、たかが知れているのですから。

 

 

 

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