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不動産の価額について

投稿日:2018年06月13日【 ひとりごと | 不動産登記

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モノ(財貨)及びサービス(役務)の価額は需給関係によって定まるというのが、経済の常識です。このことは、不動産にも当てはまります。

 

しかし、土地の価額について「一物五価(いちぶつごか)」という言葉があるように、不動産には複数の価額概念が存在し、紛らわしいことこの上ありません。そこで、今回は、それぞれの価額概念についてその意味や用途等を整理してみましょう。

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1 土地の価額

(1) 成約価額等

「成約価額」とは、実際に土地が売買された「代金額」のことです。「実勢価額」と呼ばれることもあります。これは、取引成否やその代金の決済に関係するほか、将来、取得した土地を更に売却する際の不動産譲渡所得(さらに納税額)を算出するための基準ともなります。

 

「時価」も、成約価額に近い概念です。ただし、成約価額が取引成約まで分からないのに対して、時価は、周辺の成約実績等から「相場」を形成するものという意味で用いられることが多いでしょう。もっとも、土地がすべて特定物(個性に着目して取引されるもの)であるため、その時価は、種類物(種類・数量に着目して取引されるもの)のように容易には把握できません。

 

時価や相場は、これから不動産取引に参加しようとする人たちが心得ておくべき価額とも言えるでしょう。

 

 

 

(2) 公示地価

「公示地価」とは、「一般の土地の取引価格に対して指標を与え、及び公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もつて適正な地価の形成に寄与することを目的と」して国土交通省が毎年(3月末)公表している「正常な価格」のことです(地価公示法第1条)。

 

つまり、公示地価は、「標準地」の適正な1㎡単価を示したものということです(下記3「国土交通省土地情報システム」サイト参照)。標準地は、都市計画地域を中心として全国に26,000ヶ所設定されています。

 

例えば、毎年恒例のように報道される東京都中央区銀座「山野楽器本店」前の土地の公示地価は、2018年も5550万円/㎡で全国1位でした。

 

公示地価の目的は、まず、民間取引の代金額の指標を国民に分かりやすく提供することです。これには、仲介業者とそれ以外の国民との間にある情報格差を埋めるという意味があります(下記3)。

 

また、公示地価は、私有地を公共事業等のために買収・収用するための補償額の指標となります。これは、私人の財産権を保護するという趣旨です(憲法第29条第3項)。

 

 

 

(3) 基準地価

「基準地価」は、根拠法が国土利用計画法であること及び調査主体が都道府県であることを除けば、公示地価と趣旨及び用途を同じくする価額概念です。毎年(9月)「調査地点」の1㎡単価が公表されます(下記3「国土交通省土地情報システム」サイト参照)。調査地点は、宅地を中心として全国に21,644ヶ所(平成29年度)設定されています。

 

 

 

(4) 路線価、評価倍率

「路線価」には、国税庁が相続税及び贈与税の課税標準の算定基準とするため毎年(7月)発表する「相続税路線価」と、市町村が固定資産税評価額(下記(5))の算定基準とするため毎年(4月。ただし、評価替えは原則3年毎)発表する「固定資産税路線価」とがあります。どちらの路線価も、市街地道路に面した土地の価額を1㎡単価で表したものです。

 

しかし、単に路線価と言えば、これらのうち相続税路線価のことを指すのが一般です。これに対して、固定資産税路線価は、行政手続きの公平を担保するために公表される(地方税法第410条第2項)のであって、市民が自ら税額(固定資産税)を計算するためにこれを用いることはありません。

 

そこで、以下、相続税路線価についてのみ述べます。

 

相続税及び贈与税の課税標準は、対象土地の地積に路線価を乗じ、これに土地の状況(接道、形状等)に応じた補正を加えるという方法で算定します。路線価は、公示地価の8割程度に設定されることが多いようです。

 

路線価は市街地を中心にして定められているため、路線価のない地域も存在します。このような地域にある土地について相続税等の課税標準を求めるためには、「評価倍率」を固定資産税評価額(下記(5))に乗ずる方法を用います。ここで用いられる評価倍率表は、路線価図とともに国税庁のホームページでも公開されています(下記3)。

 

 

 

(5) 固定資産税評価額

「固定資産税評価額」は、市町村が固定資産税算定の課税標準とする価額です。固定資産税の他に、都市計画税、不動産取得税及び登録免許税の課税標準としても利用されます。固定資産税評価額は、公示地価にもとづいて算定された土地価額の7割程度に設定されることが多いようです。

 

 

 

 

2 建物の価額:土地との対比

建物は、人によって生成され、やがて滅失するものであるという性質があります。このことから、価額概念においても土地との差異を生じます。

 

建物についても、成約価額、実勢価額、代金額、時価、相場、及び固定資産税評価額という価額概念は、土地の場合と同じ意味で用いられます。他方、公示地価、基準地価及び路線価に相当するような基準はありません。

 

また、建物の固定資産税評価額は、土地のそれよりも税務上の用途が広く、固定資産税、都市計画税、不動産取得税及び登録免許税の課税標準であることはもちろん、相続税及び贈与税の課税標準としても用いられます。

 

建物が生成する性質をもつことから、新築建物の場合など、固定資産税評価額が未だ付されていないこともあります。この場合、不動産取得税の課税標準を算定するためには、総務大臣の定める「固定資産評価基準」に従って当該建物を評価する必要があります。これは、建物の構造や床面積等をもとに再建築費用を算定し、経年減価補正(減価償却と同様の処理)を加えるという評価方法です。実際の建築費とは何の関係もありません。また、これと似ていますが、登録免許税の課税標準を算定するためには、管轄法務局の公表する「新築建物等課税標準価格認定基準表」による簡易な評価方法が用いられます。

 

さらに、建物が滅失するという性質を持つため、建物の会計処理においては「減価償却」が行われる点も特徴的です。このことは、事業者の貸借対照表上の資産評価に関わるほか、建物の不動産譲渡所得の計算にも関係します。

 

 

 

 

3 不動産取引情報の格差

価額に限った話ではありませんが、昔から不動産取引の場では、仲介業者というプロと、取引当事者となる素人との間に、前者に圧倒的有利な情報格差が存在してきました。すなわち、相場をはじめ、取引当事者が判断の指標とすべき重要な情報は、仲介業者側に偏在してきたということです。

 

今日でも、取引当事者の無知につけ込んで、不適切な取引を仕掛けるような仲介業者は珍しくありません。

 

平成2年、不動産取引情報を共有化するために、「レインズ Real Estate Information Network System」という情報交換制度が導入されました。仲介業者は、専任媒介以上の契約を締結した不動産(つまり、ほとんどの取引)の売却情報を、レインズに登録しなければならなくなりました(宅地建物取引第34条の2第5項)。

 

レインズは、売主と買主とを引き合わせるのが本来の目的ですが、登録された成約情報を手がかりとして相場を探るような目的でも利用されています。ただ、レインズを閲覧できるのは仲介業者だけであるため、情報の共有化と言っても、プロと素人との情報格差を埋めるものではありません。

 

ところが、最近、インターネットの成熟により、この状況に改善の兆しが見られるようになりました。既にネット上にはレインズに劣らない不動産情報を網羅した民間サイトも登場しています。レインズの一般公開という話すら現実味を帯びてきたように思われます。その気になれば、素人も自ら情報収集できる環境が整いつつあるというわけです。

 

 

 

参考として、本稿内容に関連したサイトを挙げておきます。

国土交通省土地情報システム

国税庁路線価・評価倍率表

マンションレビュー

おうちデータベース(関東4県マンション)

 

 

 

 

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