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後見制度支援信託について

投稿日:2014年12月29日【 成年後見

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 今回は、後見人の誤った財産管理によって被後見人に生じる損害を防止するために、平成24年2月から導入された「後見制度支援信託」について整理してみましょう。(本稿では、未成年後見についての説明は割愛します。)

1. なぜ必要か?

イメージ:成年後見、後見制度支援信託

 成年後見開始審判があると、認知症等の精神上の障害によって事理弁識能力(自らの法律行為の結果が自分にとって有利・不利になるのかを判断できる程度の能力)を失ってしまった本人(以下、「成年被後見人」という。)のために、家庭裁判所によって選任された法定代理人(以下、「成年後見人」という。)が財産管理及び身上監護を行います。

 成年後見人は、他人である成年被後見人の財産を管理するのですから、厳格な規律のもとに職務を行われなければなりません。誤った財産管理は、下手をすれば背任や横領といった犯罪に該当することもあるからです。このため、成年後見人は、報告義務や選解任権等を通して家庭裁判所の監督に服さなければなりません。

 しかし、いくら家庭裁判所が監督しているとは言っても、子や配偶者等の親族が成年後見人となっている場合(以下、「親族後見人」という。)に、他人の財産を管理するという意識が希薄であることから、誤った財産管理が行われるケースが後を絶ちません。

 他方で、成年被後見人が残存能力を活用して住み慣れた環境の中で暮らしていけることを目標とする成年後見制度の趣旨からすれば、従前から成年被後見人の生活全般にわたって面倒を見てきた親族が、そのまま成年後見人に就任するのが最適だといえる事案は多いと考えられます。

 そこで、親族後見人選任の必要性と、親族後見人による財産管理の適正化とを実現するための手段の一つとして考案されたのが後見制度支援信託なのです。

2. どのような制度か?

(1)利用できる後見類型

 後見制度支援信託を利用できるのは、成年後見(狭義)と未成年後見です。成年後見制度の中でも、保佐類型や補助類型においては後見制度支援信託を利用することは出来ません。

(2)制度の概略

 後見制度支援信託とは、被後見人の財産のうち、日常必要とする範囲の金銭だけを親族後見人に管理させ、残りの金銭を信託銀行等に信託するという仕組みです。

 信託対象となる財産は、金銭(換価容易な有価証券等は換価したうえで信託する。)に限られます。なぜなら、金銭(又は換価容易な有価証券等)は、濫用される危険が最も大きいからです。

 仮に、被後見人のために日常的な必要費を超える想定外の支出等の必要が生じた場合には、その都度、後見人が家庭裁判所に対して指示書の発行を求め、この指示書に従った財産管理(例えば、信託財産の一部の払い戻し等)を行わなければなりません。つまり、後見制度支援信託とは、大きな金銭を動かす必要がある場合等に、その都度、家庭裁判所の監督機能を働かせる制度だということができます。

 ちなみに、信託とは、財産管理の方法の一つです。信託を設定するためには、(ⅰ)一定の財産が受託者に帰属すること、そして(ⅱ)受託者が、一定の目的に従って、受託した財産を管理・処分し、目的達成に必要な行為をする義務を負うこと、を定める必要があります。ここでは、被後見人(「受益者」という。)のために使用することを定めて、金銭を信託銀行(「受託者」という。)に預けることだという程度の理解をしておけばよいでしょう。

 信託という枠組みが利用される理由は、信託財産の保全のためです。すなわち、信託財産は、受託者の固有財産とは分別管理され、受託者の債権者から保護されていますし、万一受託者が破産しても破産財団に組み入れられることもありません。また、信託財産は、利用目的を限定されていることから、後見人が自由に処分することもできません。

(3)利用方法
イメージ:信託契約

 後見制度支援信託において、信託銀行と信託契約を行うのは、弁護士や司法書士等の「専門職後見人」でなければなりません。このため、後見開始審判の際に親族後見人を付すことが予定されている場合、家庭裁判所は、親族後見人とともに専門職後見人を選任する等の必要があります。

 後見制度支援信託を利用しようとする際には、まず、専門職後見人は、被後見人の生活・財産状況を踏まえて、いくらの金銭を日常必要な生活資金とし、いくらの金銭を信託すべきかを家庭裁判所に対して報告します。

 次に、家庭裁判所は、専門職後見人の報告をもとに、信託契約締結のための指示書を発行します。

 そして、専門職後見人は、この指示書に従って、信託銀行と信託契約を締結します。締結後に、専門職後見人は、後見人を辞任し、後見事務を親族後見人に引き継ぎます。

 本稿は、親族後見人の財産管理権の濫用防止のための方法の一つとして、後見制度支援信託を解説しています。これは、親族後見人による財産管理権の濫用事例が多数発生しているためです。ただ、誤解しないでいただきたいのですが、私は、専門職後見人の財産管理について問題がないと言っているわけではありません。他人の財産を管理する以上、専門職後見人にも、親族後見人の場合と同じように濫用の危険が当然存在するからです。しかし、この点に関しては後稿に譲りたいと思います。

 神戸六甲わかば司法書士事務所では、成年後見・財産管理などの相談を受け付けています。

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