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成年後見制度について(問題と展望)

投稿日:2018年04月11日【 ひとりごと | 信託 | 成年後見 | 金銭トラブル

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「成年後見人を解任したい。」という相談を被後見人の親族から受けることがあります。別に珍しいことではありません。今回は、なぜこのような相談が生じるのかその背景を考えるとともに、成年後見制度の展望について私なりの考えを述べてみたいと思います。

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1 成年後見制度とは

(1) 制度の概略

成年後見制度とは、認知症等によって判断能力の十分でない人の保護のため、その法律行為や財産管理を円滑に行えるようにするための制度です。例えば、この制度を利用すれば、認知症になった人でも、施設への入所契約を行ったり保有財産の管理や処分を行ったりすることができるわけです。

 

広義に成年後見制度といえば、家庭裁判所の関与の度合いが大きい「法定後見制度」(=狭義の成年後見制度)と、私人間の契約を基礎とする「任意後見制度」とがあります。さらに、前者には、保護を受ける人の判断能力の程度に応じて、「後見」(=最狭義の成年後見制度)、「保佐」及び「補助」という3類型があります。しかし、任意後見制度の利用は相対的にそれほど多くはありません。さらに、狭義の成年後見制度のうちでも、8~9割方は後見類型が利用されているのが実情です。そこで、本稿でも、特に断りがない限り、後見類型の法定後見制度、つまり最狭義の成年後見制度について話をすることにします。

 

成年後見は、判断能力を欠く常況にある人について、家庭裁判所が一定の親族等の申立てにより開始します(民法第7条)。そして、後見の開始とともに、この判断能力を欠く常況にある人(「成年被後見人」といいます。)に対して、法定代理人(「成年後見人」といいます。)が付されます(民法第8条)。これによって、成年後見人が、成年被後見人の法律行為を原則として全て代理して行えるようになるわけです。ただし、成年被後見人は、単独で(=代理人抜きで)、婚姻等の身分行為をすることはできるし、選挙権を行使することも日常の買い物も問題なく行うことができます。

 

 

(2) 親族後見人と専門職後見人

成年後見制度が始まったばかりのころは、家庭裁判所に対して親族の一人を後見人候補者として申し立てて、これがすんなり認められる(=候補者たる親族がそのまま成年後見人として選任される)のが常でした。ここで成年後見人になった親族のことを「親族後見人」とい呼びます。

 

しかし、最近では、後見人選任をめぐる事情は大きく変化しました。平成27年に選任された成年後見人のうち、親族後見人の占める割合は3割を切る程度にまで減少しています。残り7割は親族以外の第三者が後見人になるのですが、その大部分を占めるのが、多い順に、司法書士、弁護士、社会福祉士等の「専門職後見人」です。つまり、現在では、専門職後見人が親族後見人に優先して選任されるようになったというわけです。(平成28年9月23日「成年後見制度の現状」内閣府成年後見制度利用促進委員会事務局参考資料6)

 

このような変化があった理由は、親族後見人による「不正」が頻発したためです。ここでいう「不正」は、主に後見人による被後見人の財産の横領を指します。成年後見制度の利用が増えるにつれ、横領の被害額も増加し、例えば家庭裁判所が平成26年単年に把握した全国の成年後見人による被害金額だけで合計約56億7000万円に達したとのことです。同じ被害を事件数でみると、平成26年単年で831件の後見事件において不正が発覚したというのです。

 

もちろん、親族後見人だけが横領をするのではなく、専門職後見人も横領します。前段落のデータを親族後見人と専門職後見人とに分けて見ると、全体的な傾向が分かるでしょう。

 

被害額約56億7000万円のうち、90.1%が親族後見人による被害額で、9.9%が専門職後見人による被害額です。さらに、事件数831件のうち、親族後見人によるのは809件(事件数全体の97.3%)で、専門職後見人によるのは22件(同2.7%)です。これを1件当たりの被害額平均に換算すると、親族後見人約632万円に対して、専門職後見人約2545万円ということです。分かりやすくまとめると、次のように言うことができます。

 

「専門職後見人を選任した場合に起こった横領等事件の割合は、親族後見人を選任した場合に比して遥かに低い(100分の3未満)。しかし、専門職後見人が横領等した場合には、親族後見人が横領等する場合に比して被害がかなり大きい(約4倍)。」

 

しかし、「後見人は横領するもの」だと単細胞に誤解してはいけません。現在、継続中の成年後見制度(広義)の利用は約20万件もあるのです。つまり、20万人の被後見人が、この制度の支援を受けているということです。横領するような不徳な後見人は、親族であれ、専門職であれ、ほんの一握りに過ぎません。大部分の成年後見人は、まじめに後見事務を行っているということはきちんと認識すべきです。

 

 

(3) 不正防止の対策

上記に挙げた平成26年をピークに、以降、成年後見人による不正は減少しています。不正防止のために行われている対策が、一定の成果をあげていると評価することも出来るでしょう。主な対策を紹介してみましょう。

 

対策1: 専門職後見人の選任

上記(2)のとおり、近年、専門職後見人が選任される比率が高くなってきました。法律等の専門家だから不正を行わないというわけではありませんが、専門職後見人にとって不正防止の動機付けが大きいことは当然です。仮に専門家が不正を行えば、刑事訴追されて実刑を受ける可能性が高いうえに、自身の生活の糧である資格も信用も失ってしまうわけですから、そんなリスクを冒してまで横領する専門家は稀ということです。

 

対策2: 成年後見監督人の選任

親族後見人が選任され、かつ、横領されやすい財産(現預金)が多い場合、後見人のお目付け役として「成年後見監督人」が付されることが多くなりました。成年後見監督人には、通常、司法書士や弁護士が選任されます。

 

成年後見人は、定期的(年1回)及び必要に応じて家庭裁判所に事務報告しなければなりません。つまり、家庭裁判所は、事務報告を通じて後見事務の適正を監督するわけです。しかしながら、このような監督方法は受動的で、きめ細かい監督を行うことができません。仮に後見人の不正があっても、家庭裁判所がそれを見過ごしたり、欺かれたりするかもしれません。

 

そこで、家庭裁判所の監督機能を強化するために選任されるのが成年後見監督人です。成年後見監督人は、専門家の目で、臨機応変に後見事務を監督し、時には後見人に助言したり、後見人と被後見人の利益が相反する行為の代理を務めたりもします。

 

対策3: 成年後見制度支援信託の利用

親族後見人が選任され、かつ、横領されやすい財産(現預金)が多い場合には、「成年後見制度支援信託」が利用されることも多くなりました。

 

「信託」の意味についてはここでは説明を省略しますが、成年後見制度支援信託とは、大雑把に言えば、被後見人の生活にとって通常必要でない現預金の大部分を信託銀行に預けてしまうという仕組みです。例えば、預金を10億円持っている被後見人にとって、1年間に必要な生活費が300万円でしかないのだとしたら、当面必要のない残りの9億9700万円を信託銀行に預けてしまうわけです。

 

信託された預金を利用するには、信託契約の中に予め用途、金額、支払時期等が定められているか、又はその都度家庭裁判所の指示を仰ぐ必要があります。つまり、後見人が信託財産に手を触れることができなくなれば、横領される危険もないというわけです。

 

 

 

2 成年後見人と被後見人の親族との不和について

(1) 成年後見制度を利用するきっかけ

成年後見制度は、被後見人たるべき本人が抽象的な法文上の要件(「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」民法第7条)に該当するようになったからと言って、当然に利用(=家庭裁判所への申立て)されるものではありません。

 

利用の契機となる典型的ケースを挙げてみましょう。イメージしやすいように、「精神上の障害により事理を弁識する常況」を「認知症」と置き換えて単純化してみますが、もちろん認知症に限られるわけではありません。

 

 

ケース1: 相続問題

遺産分割する必要があるが、共同相続人Aは、認知症のため協議することができない。

 

ケース2: 財産処分

認知症の親Aを介護施設に入れるにあたって、費用捻出のためAの資産の一部を換価したり、介護保険契約や入所契約を有効に結んだりしなければならない。

 

ケース3: 財産処分

認知症の親Aのために、子Bがその預金を解約しようとしたら、Aが認知症であることを知った銀行が口座を凍結してしまった。

 

ケース4: 親族間の財産争い

認知症のAの財産を、近所に住む親族Bが勝手に占有し自己のために勝手に使用している。他の親族Cらはこれに不満をもっている。

 

ケース5: 孤独

高齢者福祉担当の市職員Bが身寄りのない一人暮らしのA宅を訪問すると、Aの認知症が進行し、このまま生活を続けることが著しく困難であることが判明した。

 

 

 

(2) 不和はなぜ生じるのか?

上記ケース5を除いて、一般的に、成年後見制度を利用しようとする親族の動機は、目の前にある具体的問題を解決することにあります。そして、その問題解決のために利用可能な選択肢が成年後見制度だけであるということも少なくありません。それならば、成年後見人は、親族に有り難がられる存在であるはずです。ところが現実には、冒頭の相談のように、親族から「成年後見人を解任したい。」という発言が出てくることがあります。なぜでしょう?

 

このことは別に矛盾ではありません。というのも、被後見人の親族は、目の前の一回的問題を解決したいだけであることが少なくありませんが、成年後見制度というのは、被後見人が死亡するまでの継続的な財産管理を目的とする制度であるからです。つまり、制度利用の具体的動機と、その制度趣旨が全く違うのです。目の前の問題が過ぎてしまった後にも居残っている成年後見人が、親族にとっては邪魔者に見えてくることがあっても不思議ではありません。

 

さらに、もともと被後見人の財産をめぐって親族間に争いのあるケース4のような場合には、専門職後見人が親族の憎しみの対象になってしまうことも少なくありません。

 

また、専門職後見人は、仕事として後見事務を行っているのですから、当然報酬を取るのですが、この報酬は、「報酬付与の審判」という家庭裁判所の決定によって、被後見人の資産の中から支払われます。誤解の多いところですが、専門職後見人が管理する被後見人の財産から、好き勝手に報酬を取って(「お手盛り」)いるわけではありません。しかし、親族にとっては、この報酬の仕組みも、専門職後見人に対する怨嗟の原因になることがあります。

 

 

 

3 成年後見制度の問題点

以下、成年後見制度について私が不満に思っていることを挙げてみましょう。

 

(1) 重厚長大な制度

例えば、認知症の共同相続人が関わる遺産分割のような場合(上記ケース1)、成年後見制度を利用する他に適切な(=違法・脱法でない)選択肢がありません。しかし、現実には、管理されるべき本人の財産がわずかしかないとか、親族が十分満足にに本人を事実上「後見」できているとか、本人の実情に沿った臨機応変な解決が図れないとかいった様々な理由で、成年後見制度を利用するのが妥当でないと思われることが多々あります。成年後見制度が重厚長大過ぎて、使いづらいということです。

 

 

(2) 家庭裁判所の監督機能の不備

不正が起こってしまう原因を不徳な成年後見人の側にだけ求めるのは、一方的だと思います。成年後見人は、不正の誘因に囲まれており、成年後見制度に十分な不正防止機能が当然に備わっていて然るべきなのです。ところが、この制度は、制度設計においてもその運用においても、性善説にもとづいているように思われてなりません。

 

成年後見制度の利用は、右肩上がりで増え続けています。大雑把に言えば、毎年新たに約1万人ずつ成年後見制度(広義)の利用者が増えています。そして、一旦利用が開始されると、基本的には利用者が亡くなるまで継続します。これに対して、制度運営を監督すべき家庭裁判所の人員はそれに釣り合うだけ増員されることはまずありません。

 

専門職後見人や成年後見監督人の選任を増やすという最近の傾向も、意地悪な見方をすれば、家庭裁判所の監督機能不足を、被後見人の負担で補っているとも解することができます。

 

 

(3) 後見人の担い手不足

司法書士、弁護士、社会福祉士等の専門家にとっても、親族とのトラブルに巻き込まれる可能性の高い後見事務は、引き受けるのに勇気のいる仕事です。さらに、被後見人の財産状況によっては、専門職後見人の報酬がほとんど出ないボランティアのような仕事になってしまうことも少なくありません。

 

近年、市民のなかから後見人としての人材を育成する「市民後見推進事業」が自治体規模で行われるようになりました。しかし、これも意地悪な見方をすれば、後見事務の負担を善意の市民に押し付けていると解されなくもありません。

 

 

(4) 費用

現在、成年後見制度の利用のための費用(申立費用及び後見人報酬)を公費で援助する仕組み「成年後見制度利用支援事業」を実施する自治体が全体の約8割を超えています。つまり、資産のない本人も成年後見制度を利用しやすくなりつつあるということです。

 

とは言え、成年後見制度の利用が本人負担であることに変わりありません。さらに、専門職後見人が付された後見事件においては、被後見人本人の負担は決して小さいものではありません。上記のように、成年後見人に対する報酬は家庭裁判所が決定し、資産の規模や個別事情に応じて一応の相場が形成されているため、被後見人を害するような不当な報酬が支払われるということはありません。

 

しかし、誰しも判断能力が衰えたり失われたりする可能性があるのに、その解決を原則各人負担とすることが制度として妥当なのか、考え直す必要があると思うのです。

 

 

(5) 他の制度的選択肢(任意後見制度、信託)

成年後見制度(狭義)の「不便」を問題として、任意後見制度や民事信託を推奨する自称「専門家」達がいます。これら各制度の内容について本稿では説明を省略しますが、私は、成年後見制度以上に不正の温床になりやすく、監視機能の欠けているこれらの利用を、現状のままでは誰に対しても勧める気にはなりません。

 

そもそも、ここで成年後見制度の「不便」として語られるのは、保護されるべき本人の「不便」ではなく、親族の都合であることが常であるように思います。また、推奨している「専門家」たちも、本人の利益を思ってそうしているのではなくて、頭の中で自分の算盤をはじいているだけのように見えます。

 

 

 

4 展望

(1) 法的選択肢の拡充

判断能力を失ってしまった本人が、法律行為を有効に行うためには、現在、成年後見制度を利用することがほとんど唯一の選択肢です。ところが、成年後見制度は、一回的な法律行為のための制度ではなくて、包括的かつ継続的な財産管理の制度です。このため、目の前の法律問題を解決するという目的のためには、成年後見制度が重厚長大に過ぎると感じることが少なくありません。

 

思いつきに過ぎないと叱責されるかも知れませんが、家庭裁判所の関与のもとに一回的な問題解決に適するような特別代理人を選任するような仕組みがあればと思います。親権者と子の利益が相反する場合に特別代理人が選任される(民法代826条第1項)のと同じようなイメージです。

 

 

(2) 後見監督事務のIT化、AI化?

成年後見制度に対する家庭裁判所の監督機能は不足しています。この不足を補うため、専門職後見人の選任が増加し、成年後見制度支援信託の利用が促されることとなりました。しかし、家庭裁判所は、監督機能不足の問題を解決したというよりは、つまるところ、これを被後見人本人に押し付けただけなのではないでしょうか。専門職後見人の報酬も、成年後見制度支援信託利用のための費用も、結局は被後見人本人が負担するのですから。

 

だからと言って、私は、単に家庭裁判所の後見部門の人員を増やせばよいとは考えていません。というのも、財産管理という事務は、IT(情報技術)やAI(人工知能)と非常に親和性があると考えるからです。外部者である私が言うのもおこがましいことですが、家庭裁判所が後見監督事務をIT化する余地は無限にあるように見えます。

 

一例として、成年後見事務を扱う司法書士でつくる公益社団法人リーガルサポート(私自身は会員ではありません。)は、会員からの同法人に対する後見事務報告(家庭裁判所への報告の事実上の前審査に相当)を独自のオンラインシステムを用いることによって省力化・自動化しています。同システムでは、不正が疑われるような事案も、データ間の齟齬からすぐに探知されてしまいます。

 

リーガルサポートの存在自体に議論のあるところですが、家庭裁判所が後見監督事務をIT化するうえで同法人の取り組みをモデルとすることができるでしょう。裁判事務をオンライン化するという発想に対しては、紙至上主義の人達からの拒絶反応が予想されますが、そんなものは時代錯誤だと思います。コンピューターの方が人よりも優れているような分野の仕事は、コンピューターにさせるべきです。

 

 

(3) 成年後見制度支援信託の利用拡大

さきに紹介した成年後見制度支援信託というのは、法律上の制度ではなくて、家庭裁判所の実務上の取扱に属する制度です。現在、成年後見制度支援信託は、親族後見人が選任され、かつ横領されやすい形態の積極財産(現預金)が一定額(1200万円程度)を超える場合、利用されています。

 

私は、この制度を専門職後見人が選任された後見事件にも積極的に適用すべきだと考えます。専門家だからと言って、被後見人にとって通常必要のない額の財産を手の届きやすいところ(普通預金や定期預金)に置いておいて良いということにはならないからです。それに、一旦、専門家が横領すると、その被害額は多額になる傾向があることは前記した通りです。

 

成年後見制度支援信託の利用を広げることは、家庭裁判所の運用を変更するだけで簡単にできることです。ただし、そのためには、費用をもっと下げる必要もあるでしょう。

 

ここで、費用というのは、主に信託契約時に一時的に選任される専門職後見人の報酬のことです。成年後見制度支援信託を利用する際には、法律の専門家でない親族後見人が信託という複雑な契約を結ぶのは困難であることから、親族後見人に追加して一時的に専門職後見人が選任され、信託すべき財産の規模や契約内容を精査し、信託契約だけを代理します。そして、この報酬の相場は、30万円~と言われています。もちろん、この報酬も家庭裁判所が決定するので、別にお手盛りではありません。しかし、私には、信託契約を行うという型通りの事務をするのに、30万円~の報酬を取るほどの手間がかかるとは到底思えません。

 

仕事でやっている以上専門家が報酬を取ること自体は当然だと思いますが、成年後見制度は被後見人のための制度であるということを忘れてはいけません。成年被後見人に、不正防止の費用を転嫁するという発想がおかしいと思います。

 

他方、信託銀行に支払う信託報酬は、銀行にもよりますが、既に利用を普及させるに十分な程度に低廉であると思います。振替を行うのが主な事務ですから、報酬もそれに見合う程度です。

 

 

(4) 少子・高齢化:赤の他人が支えあう社会

国民が全体として若く、大勢の親族たちが限られた地域に集まって生活するのが普通であるような社会においては、判断能力の衰えた本人を親族の誰かが事実上「後見」して、それでなんとなく全て丸く収まってしまうことでしょう。しかし、残念ながら、現在の日本はそのような社会ではありません。少子化と高齢化は、今後も数十年間は進行する見込みです。それに伴って、判断能力が衰えたにもかかわらず誰にも頼ることのできない高齢者もますます増えていくことでしょう。成年後見制度の出番も増えるわけです。

 

さらに、上記のように、現在、専門職後見人は、親族後見人の倍以上選任されるようになりました。不正防止という動機を除いても、赤の他人が赤の他人を後見するということは、将来的には当たり前になっていくでしょうし、そうならざるを得ないと思います。

 

ところで、現在の成年後見制度は、個人の行為能力を補うためのものでしかなく、その利用負担も当の個人にかかってくるような考え方にもとづいて設計されています。つまり、極端な言い方をすれば、ある程度の資産を持っている人を利用者として想定しているわけです。

 

しかし、少子化と高齢化が進んだ社会を見据えたときに、制度の想定する利用者はもっと広くあるべきでしょう。私は、成年後見制度は、介護保険制度などと同じく、社会保障の一つとしてきちんと位置づけられるべきと考えます。判断能力の低下や喪失という事態は、誰にでも高い頻度で起こりうることなのですから、国民全体でその危険を負担し合うという社会保障の考え方にもとづいた制度にすることが妥当だと思うのです。

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5 私(司法書士)自身の成年後見制度とのかかわり

私は、成年後見の申立事件や継続事件に関する書類作成を受託することは多々ありますが、実は、誰の後見人にもなっていません。今後も、この制度が大きく変わらない限り、後見人になるつもりはありません。私が後見人にならない方針であるのは、現状の成年後見制度について、本稿で述べたようないろいろな不満を持っているからです。

 

その一方で、私は、成年後見制度が日本の社会保障において大きな役割を果たすような制度に成長することを夢に見ています。私自身にも、私の大切な人たちにも、いつか判断能力が無くなってしまう日が訪れるかもしれません。その時には、呆けた私達が安心して暮らせる社会になっていたらと切に願っているのです。

 

 

 

 

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