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不動産の名義変更(=所有権移転)と税金:財産分与編

投稿日:2015年01月17日【 不動産登記 | 離婚

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 不動産という大きな財産の所有権を移転するという場面では、様々な税金の問題が絡んできます。税金のことを考慮せずに、無計画に不動産の所有権を移転してしまうと、不意に高額の税金を課されて驚くといったことにもなりかねません。

 そこで今回は、財産分与の事例を通して、不動産の所有権移転と税金に関する問題点を整理してみましょう。(但し、私は税務の専門家ではありませんから、本稿は、登記業務に関連して考慮すべき税金の問題を整理することのみが目的です。そのつもりでお読みください。)

1. 財産分与の事例(以下、「本事例」という。)

イメージ:離婚に伴う財産分与

 夫Aと妻Bとは、離婚に向けた話し合いをしています。その話し合いの中で懸案となっているのが、家族がこれまで生活の場としてきた一戸建て住宅とその敷地(以下、「本件不動産」という。)をどうするかという問題です。

 本件不動産は、15年前にAがC銀行から3,500万円の住宅ローン融資を受けて購入したもので、この住宅ローン債権を担保するためのC銀行の抵当権が登記されています。現在も、住宅ローンの債務が2,000万円残っている状態です。

 Aは、離婚後に本件不動産に居住し続ける意図はないため、自分にとって負担の少ない方法であれば、本件不動産をどのように処分しても構わないと考えています。そこでAは、本件不動産を売却することも考え、近所の不動産屋に相談したこともありました。しかし、不動産屋によれば、本件不動産は1,500万円程度でしか売却できそうにないとのことでした。住宅ローンを完済するためには、少なくともあと500万円必要になりますが、Aには、すぐに500万円を用意できる程の資力はありません。

 一方Bは、様々な事情から本件不動産への居住継続を望んでおり、Aとの離婚に際して、Aから本件不動産の財産分与を受けたいと思っています。しかし、Bにしても、住宅ローンの残債を一括で(Aに代わって)返済する程の資力はありません。

 話し合いの結果、本件不動産については、AがBに対して財産分与するということは決まりましたが、住宅ローンの残債務の処理方法については方針が定まりません。

2. どのような税金について考慮すべきか?

(1)財産分与と贈与税

 贈与税とは、対価なしに財産の移転が行われる場合に、課せられる国税です。受贈者が納税義務を負います。ここで贈与税の対象になる「贈与」とは、民法上の「贈与」よりも広い概念であることに注意すべきです。財産分与も広い意味での「贈与」と解することも可能ですが、夫婦財産の清算(潜在的持分の取得)的な意味合いを持つため、贈与税は課されないのが原則です。

 従って、名目上は「財産分与」といっても、夫婦財産の清算という趣旨を逸脱した財産分与がなされた場合、すなわち分与対象財産の価額が婚姻中に取得した夫婦財産の価値その他の事情等に照らして過大である場合には、贈与税が課される可能性が出てくることになります。

 本事例において、AがBに対して本件不動産を財産分与することは、夫婦財産の清算という趣旨を逸脱しない限りにおいて、贈与税が課されることはありません。

(2)借金を肩代わりすることに関する贈与税

 本事例の離婚協議において、本件不動産の財産分与を受けたBが、Aの代わりに住宅ローンを支払うという取り決めがなされたとしましょう。この代弁済の取り決めが、BからAに対する財産分与であると解することが出来れば、上記2(1)と同様、贈与税は課されません。

 しかし、代弁済(正確に言えば、「代弁済し、求償権を放棄すること」)は、弁済した価額に相当する利益を債務者に対し与えるものですから、贈与税の課税対象となることがあります。例えば、離婚成立から何年も経過したある時点で、Bが住宅ローンを一括繰上げ返済したような場合、突然Aに対して、多額の贈与税が課されてしまうことにもなりかねませんので注意が必要です。

(3)不動産譲渡所得税

 不動産譲渡所得税は、不動産の譲渡益に対して課される国税です。本事例のように不動産という現物を財産分与した場合、そもそも譲渡益など生じないのですから、不動産譲渡所得税を課す余地などないようにも思われます。

 しかし、税務当局は「財産分与による夫婦財産の清算は、本来金銭をもって行われるべきであって、現物を供与することはこの金銭債務を消滅させることに等しい」という理屈で、不動産の現物分与の場合にも不動産譲渡所得が発生するという解釈をしています。言い換えれば、本来、財産分与においては、分与者が不動産を換価して、金銭を与えるものであるから、現物を分与した場合にも換価した場合と同じく譲渡所得税を課すべきだというのです。本事例において納税義務を負うのは譲渡者たるAです。

 本事例において、仮に譲渡所得が発生するとした場合には、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」(租税特別措置法第35条等)の適用可否を検討する必要があります。

(4)不動産取得税

 不動産取得税とは、不動産取得という事実に関して取得者に課される都道府県税です。取得の名目は、売買、贈与、建物新築等を問いません。但し、相続や共有物分割等の「形式的取得」については、不動産取得税は課されません(地方税法第73条の7)。財産分与による不動産の取得は、夫婦財産の清算という意味合いを持つため、「形式的取得」として、課税されません。

 しかし、財産分与が夫婦財産の清算とは言えない場合(財産分与の対象が婚姻前に取得した不動産であった場合、婚姻中に取得した不動産でも分与者が相続等の原因によって取得した不動産であった場合、不動産の分与が慰謝料としての趣旨である場合等)には、原則通り不動産取得税の課税対象となります。

 不動産取得税の課税対象になる場合には、課税標準の特例(地方税法第73条の14)や税額軽減(地方税法第73条の24)等の適用可否を検討する必要があります。

(5)登録免許税

 登録免許税は、一定の登記申請に対して課せられる国税です。納税義務は、登記申請人が連帯して負担します。本事例では、AとBとが連帯して納税義務を負いますが、実務的には不動産を取得するBのみが納税します。

 神戸六甲わかば司法書士事務所では、不動産登記・不動産名義変更、財産分与、離婚に伴う各種手続きなどの相談を受け付けています。

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